マニュアルアカデミー
新人教育マニュアルは、会社や業務に入ったばかりの新人に対する教育や研修で使われる文書です。
文字や図、写真といった要素が口頭や実演だけでは説明できない業務内容を端的に説明し、新人でも全体の流れを確認しながら業務知識が得られます。
本記事では、新人教育マニュアルの概要や目的、記載事項などについて詳しく取り上げます。
マニュアル作成のポイントや新人教育で意識すべき部分についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
新人教育マニュアルとは
新人教育マニュアルの目的
新人教育マニュアルの重要性
新人教育マニュアルの記載事項
新人教育マニュアルを作成するメリット
新人教育マニュアルを作成するデメリット
新人教育マニュアルを作成する際のポイント
新入社員の教育で意識すること
マニュアルと研修を並行して有意義な教育を行う
新人教育マニュアルは、新人が新しい業務や作業内容を把握するために参照する文書です。
OJTなどの場面で、 新人教育を行う立場にある者がスムーズに教育を進められるように補助する目的もあります。
会社組織では、自社の業務内容・理念・業績・ルール・ビジョン(目標)といったさまざまな情報を伝える媒体でもあります。
新人に業務の基本を教えるだけではなく、会社組織の概要や方向性を知ってもらう役割もあるのです。
新人教育マニュアルは、3つの目的のために活用されています。それぞれの目的を詳しくみていきましょう。
新人教育マニュアルは、まだ業務に慣れていない状況を考慮して社会人としての知識やマナーを身につけてもらうために活用されています。
具体的には、ビジネスマナーや言葉遣いといった基礎的な内容が記載されており、社会人としての自覚を高めてもらう意味があります。
企業によっては、社内で使用しているツールや社内のルールを詳細に記載しています。
業務以外の事も含めて幅広く知識をつけなくてはならない新人にとって、マニュアルは心強いアイテムです。
新人への教育は、社会人経験の有無や年齢・性別に関わらず行われます。
どんな人材でも入社したばかりの頃は企業に対する知識が少ないため、新人教育マニュアルに企業の情報を掲載することで、理解を深めてもらう目的があります。
マニュアルには会社の理念や業務に関する詳細な情報が掲載されており、ホームページだけでは参照できない詳しい内容が確認できる場合もあります。
会社組織へ所属している自覚を促すためにも、マニュアルには会社の特徴や魅力などを幅広く記載しましょう。
マニュアルには、業務に関する基本的な事項が書かれています。
どの程度の内容が含まれるかは企業により違いがありますが、仕事の進め方や方向性、「報告・連絡・相談」といった仕事に必要な姿勢を記載するのが一般的です。
業務マニュアルがすでに存在していれば、新人教育マニュアルに業務の情報を詳しく掲載する必要はありませんが、新人教育マニュアル内で業務に関わる情報を取り上げれば、仕事へのモチベーションアップ効果が期待できます。
新人教育マニュアルが重要な理由は、「教育担当の負担軽減」「効率的なスキル向上」の2点です。重要性についても詳しく確認していきましょう。
多くの現場では、OJTやOFF-JTと呼ばれる方法で、熟練者から新人への教育が行われています。
しかし、一度に多くの人数を教育しなければならない現場では、教育担当者にかかる負担が少なくありません。
そこで、すべての新人に共通して教える項目は新人教育マニュアルに掲載し、負担を軽減します。
一対一で教えていくよりも効率的かつ無駄がなく、教育レベルの均一化や標準化にも役立てられるでしょう。
新人がスキルを向上させるためにも、新人教育マニュアルが活かされています。
例えば、業務スキルの向上に役立つツールやシステム、参照先といった情報を掲載すれば、自分で学べる環境が整います。
事前に学んでおいてほしいポイントを提示しておけばさらに学びやすくなり、業務や教育内容への理解度向上、スキルアップが期待できるでしょう。
新人教育マニュアルに記載すべき項目は5つに分けられます。
ビジネスマナーや企業理念、業務の内容といった基本的な項目について確認していきましょう。
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「マニュアルの出来は構成で決まる? 押さえておきたいポイントを解説」
ビジネスマナーは、業務に関わらずあらゆる状況で役立つスキルです。
マニュアルに記載すべき内容は以下のとおりです。
【ビジネスマナーのポイント】
ビジネスマナーは、身の回りの整頓から社外に対しての対応に至るまで多岐にわたります。
上記は一例であり、ここに報告・連絡・相談を含めるなど細分化する場合もありますが、内容が複雑になると混乱を招くため、シンプルに記載しましょう。
企業理念は会社の価値観であり、すべての従業員が業務を行っていくためのベースとなる考え方です。
自社が将来的に目指す目標や創業者から従業員への思い、社員が共有して念頭に置いてほしい基準でもあります。
企業の存在意義や従業員に求める行動の指針も含まれるため、企業理念は早い段階で従業員に周知したいポイントです。
業務が始まってからでは企業理念を意識しにくくなるため、新人研修マニュアルに含めておくことが大切です。
業務の内容・流れは、業務マニュアルがなければ新人研修マニュアルに記載してください。
別途作成した業務マニュアルで業務について詳しく説明し、新人研修マニュアルには大まかな業務内容や手順を示すといった方法もあります。
ただし、複数の部署から新人を集めて研修を行うようなケースでは、複数の業務内容を取り上げる必要があるため、マニュアルの内容が複雑化するおそれがあります。
新人全体に提示するマニュアルは複雑な内容にならないよう、業界・業務の全体像が見渡せる内容にとどめると良いでしょう。
新人教育マニュアルには、目標設定の意義や方法を記載しましょう。
新人からスタートして業務に慣れていくためには、自身がスキルアップをしなければならないときもあります。
そのような場合に、目標設定の方法がわかっていると効率的にステップアップできます。
同時に、モチベーションの維持についてもマニュアル内に盛り込みたいところです。
新人への教育では社内で使用しているツール、システムを使用するため、操作方法や注意点をマニュアルに盛り込んでください。
現在、ITスキルはあらゆる業種で必須ですが、特に社内で使用しているツールは基本的な操作方法を把握していなければなりません。
マニュアルに記載されていないことはそのつど上司やOJT担当が教えていかなければならないため、マニュアルに記載していつでも読み返せるようにしておくと良いでしょう。
新人教育マニュアルは、一度作成しておけばいつでも確認でき、必要に応じて改訂を加えながらアップデートできるメリットがあります。
ここからは3つのメリットを確認していきましょう。
新人教育マニュアルがあれば、一度教えてもらった内容を忘れてもすぐに確認ができます。
疑問点を解消しようと新人が上司やOJT担当に尋ねるケースが減るため、教育コストや教育工数を削減できます。
また、新人ではなくなってからも基本に立ち返らなければならない瞬間があるかもしれません。そのようなときにもマニュアルが役に立ちます。
新人が業務に慣れて、次の新人に教える立場になった際にも、新人教育マニュアルが助けになってくれるでしょう。
教える内容を一つのマニュアルにまとめれば、知識やスキルが全員で共有できます。
もしもマニュアルが存在せず、その場で教えていくスタイルならば、教育担当者の知識や経験によって教える内容にばらつきが出たり、参照できる資料がないため教わる側の理解度にも差が出てきてしまったりするでしょう。
その点、新人教育マニュアルは時と場所に関わらず、教える側の状況やスキルにも依存せずに、共通の内容を教えられます。
認識レベルの差をなくし、すべての新人が知識とスキルを共有できます。
マニュアルを作らずにその場で教えていくスタイルは、質問や疑問点を尋ねられるたびに教えなくてはなりません。
一対一であれば問題はないかもしれませんが、人数が増えるほど教育担当者への負担が大きくなり、教育の効率が低下してコストもかかってしまいます。
マニュアルが整備されていれば、何度も読み返して基本的な知識を付けられるため、教育担当者に負担がかからずコストも削減できます。
新人教育マニュアルを作成する際、定期的なアップデートや作成に時間がかかるといったデメリットが考えられます。作成の際に確認しておきたい点を詳しく抑えておきましょう。
マニュアルの内容は古いままにせず、定期的にアップデートを行ってください。
例えば、社内で使っているシステム・ツールを新しいものに入れ替えたときは、名称・操作方法などをアップデートする必要があります。
キャプチャ画像を本文中に挿入していれば、新しいキャプチャ画像に差し替えなければなりません。
企業理念のように変わらない部分はそのままで問題ありませんが、必要な部分には随時見直しを行い、新人研修に適した内容に仕上げましょう。
新人教育マニュアルは、すべての新人に対して知っておいてほしい項目をまとめた文書です。
ビジネスマナーや業務の流れといった項目をまとめる場合、内容によっては膨大になってしまい、シンプルにまとめるために時間がかかるおそれもあります。
あまりにも内容が膨大になると添削や改訂がしづらく、読み返しにくいマニュアルになってしまうため、無駄のないように仕上げなくてはなりません。
マニュアルの作成自体に工数やコストがかかるため、作成は時間・人件費といったコストを含めて計画的に行う必要があります。
マニュアルはあくまでも基本的な事柄や一般的な内容を収めたものであり、イレギュラーなケースについては記載の対象に含まれません。
業務上のリスクやトラブルに関する事柄は千差万別であり、すべてを網羅してマニュアルに記載するのは難しいものです。
未確定・不確定の情報や今後変更する可能性があるような情報も、マニュアルには記載できないため、新人には別の方法で周知する必要があります。
イレギュラーの発生や対応についてはマニュアルでカバーしきれないため、マニュアル内に相談先や連絡先を記載するなどして対応してください。
新人教育マニュアルを作成する際は、初歩的な内容をシンプルな言葉で簡潔に表現しましょう。以下に紹介する4つのポイントを意識してみてください。
業界の専門用語や難しい単語を使用するとその言葉につまずいてしまい、スムーズな理解の妨げになってしまいます。新人向けのマニュアルには、誰が読んでもわかりやすい言葉を使いましょう。
後から多くの人が読み返すものですから、基本的に難解な言葉を用いるべきではありません。
専門用語などが必要になったときは、その部分に注釈を付けて意味を説明します。ただしその注釈も、数が膨大になると可読性を下げるおそれがあるため、最低限の数にとどめると良いでしょう。
事業や業務の全体像が把握できていれば、与えられた役割がこなしやすくなります。
新人教育マニュアルの中では会社の体制や組織図を示し、それぞれが担当している業務の流れを示しましょう。全体図や組織図は図で示し、ひと目でわかるようにしてください。
読み手にとっては、自身が所属しているポジションとその他にどのような関連性があるのかを把握しやすく、関係性の把握や業務への理解促進が期待できます。
ある業務を例にとり、1日の流れを図や画像で示す方法もおすすめです。「1日の中でどのように業務を進めるのか」という疑問が解消できれば、流れに沿って行動できるようになります。
説明や指示の内容はわかりやすい言葉や言い回しを選び、簡潔にまとめてください。
難解な用語や専門的な言い回しは、不慣れな新人には適していません。新人のうちに基礎をしっかり押さえてステップアップしながら、専門的な領域へ入っていくのが理想的です。
一般的に、マニュアルは誰が見てもすぐ理解できるように記載するものです。新人に限らず、誰が閲覧してもスムーズに理解できるように記載しましょう。
できあがったマニュアルは、まだ社会人経験が少ない社員に確認してもらいましょう。
熟練した社員は専門性を有しており、難しい内容が書かれていても理解できてしまうため、適切なフィードバックが受けられない可能性があります。
経験がまだそれほど多くない社員にマニュアルを見てもらい、理解の難しい部分や改善箇所をピックアップしてもらうと、より実践的なマニュアルに仕上がります。
こうして得られたフィードバックを基に、再度マニュアルの見直しを行います。平易な文章、シンプルな言い回しを徹底し、盛り込みたい項目や内容が含まれているかどうかを確認してください。
新入社員への教育では、2つのポイントとして「座学とOJT研修の使い分け」「フィードバックする社員を選ぶ」ことを意識しましょう。
マニュアルに教えるべき項目をすべて詰め込もうとすると、座学とOJT研修の境目があいまいになり、学習内容の重複が発生しやすくなります。
新人教育マニュアルは、基本的な事柄を記載し新人全体を対象とした座学で用いるものです。マニュアルにはOJT研修ほどの専門的な内容は記載せず、全社員が把握しておく基礎的な事柄を盛り込みましょう。
マニュアルの内容を踏まえてそれぞれがOJT研修に入り、さらに踏み込んだ実践的な内容を学んでいくため、あくまでもマニュアルは座学に使うものと位置づけておきましょう。
「基礎は座学で学び、一歩進んだ教育はOJTで習得する」というイメージで、新人教育をうまく使い分けることが大切です。
新入社員への教育研修を実施したあとは、熟練者ではなく新入社員と経験や年齢が近い社員からフィードバックを受けてください。
新人教育マニュアルの作成と同じく、現場での教育も随時適切な内容にアップデートする必要があります。
「教わったはずだが身につかなかった」「聞いたはずだが忘れた」という結果は、教育の効果が正しく現れていない状態です。
そのような教育コストの無駄をなくすためにも、新入社員の立場に近い社員に教育の内容への評価や改善すべき点を判断してもらい、修正を行ってください。
今回は、新入社員や新人に配布する新人教育マニュアルの意味や目的、記載すべき項目について紹介しました。
マニュアルといっても、新人教育マニュアルは業務マニュアルのようにそれぞれの役割に特化したものではなく、新人から熟練者の社員 までが共通して理解すべき理念やポイントを記載するものです。
新人への教育は座学のほかにもOJT・OFF-JT研修、現場での対面形式とさまざまな方法がとられています。それらの教育方法と被らないように、うまくマニュアルと研修を並行し、有意義なコーチングを実施しましょう。
フィンテックスでは、新人教育マニュアルをはじめとしたマニュアル作成の相談を承っております。
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監修者
企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。 金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。 趣味は茶道。
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